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【第22回】段差解消のためのスロープについて
福祉住環境コーディネーター2級 富田智子

今回は、住宅における段差の解消方法についてお話しさせていただきます。
施工された時期によって違いはありますが、一般的に、日本の家屋には段差がつきものです。
屋内・屋外にある階段、玄関の上がり框、敷居、トイレ・浴室の入り口、浴槽の縁・・・
少し考えただけでも、いくつもの段差が浮かんできます。
最近では、このような段差を設けない住宅も作られていますが、多くの場合、このような段差があるのではないでしょうか。

これらの段差は、『生活動作』から考えると、いくつかの種類に分けることができます。

T.多くの体力を使い転倒の危険がある動作
・・・浴槽の縁やトイレの敷居などのまたぎ越え動作やトイレ、浴槽内の立ち座り動作
U.体力を使い転落の危険がある動作
・・・屋内・屋外の階段、玄関の上がり框、浴室の入り口、掃き出し窓等の昇降動作
V.つまずいて転倒する危険がある動作
・・・敷居の昇降動作

段差の解消と言っても、このような“動作”や“段差の形状、高さ”を、正確に把握し、本人に適した解消方法を行わなければ、かえって危険性が高まってしまうことも考えられます。

まずは、危険を感じる段差のある場所、移動する際のご自身の動作を、整理してみましょう。

『生活動作』を、“福祉用具貸与”や“特定福祉用具(販売)”で解消する方法もあります
Tに適した用具・・・
[貸与]移動用リフト など
[販売]腰掛便座・入浴補助用具・簡易浴槽 など
Uに適した用具・・・
[貸与]手すり・スロープ・移動用リフト など
Vに適した用具・・・
[貸与]歩行器・歩行補助用具 など

それでは、『生活動作』を“住宅改修工事”における段差解消の方法(特に「スロープ」)に目を向けてみましょう。

15mm〜60mm程度の敷居の段差。
この敷居に、スロープを設置してほしいという依頼を、ケアマネジャーやご本人、ご家族から依頼をされることがあります。
多くの方が、“スロープ設置=つまずき防止”と考えられますが、本当にそうなのでしょうか。

敷居を上り下りする場合、足底は写真のようになります。左右の足底が、平らに床に接していますので、重心の位置は支持基底面の中にあり、転倒する危険性は低く、安定した姿勢になります。

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敷居の段差につまずく場合は、このようになります。すり足で歩行される方の場合、ぶつかる場所は多少異なりますが、つま先や足底が引っかかり、支持基底面が両足から外に出てしまい転倒することになります。

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では、この敷居にスロープを設置すれば、つまずくことはないのでしょうか。
スロープは、勾配があるため、滑りを防止するために、表面に滑り止めの加工をされている場合が多くあります。 スロープが、急勾配であることに加え、滑りどめの加工により、足で踏んでしまうと、結局はつまずいてしまうことになります。

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さらに、このスロープを踏んで移動する場合、重心位置が支持基底面の外に出て行こうとするため、不安定な姿勢になります。特に、動作が緩慢な方は、次の足が出しづらいため転倒の危険性が高くなります。

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市販されているスロープは、奥行きが少ないため勾配が大きい物になってしまいます。
廊下幅に影響しない程度の寸法で考えると、このような形状になってしまう訳ですが、このようなスロープでは、勾配が大きいためつまずきを防止するまでには至りません。
スロープを設置し、つまずきを防止する場合、スロープをまたげば良いのですが、足を、高く、遠くへ出すことになり、片足で姿勢を保つ時間も増えることになってしまいます。

このように、特に支持具が必要無くても歩くことができる方の場合、スロープで敷居の段差解消をすることは、最善の方法では無いかもしれません。しっかりと脚を上げて歩行ができる能力がある場合は、“出来る動作”を大切にし、進行方向へ手すりを取り付けることで、転倒を予防することができると思います。
歩行する能力はあるのに、注意緩慢なため、敷居の段差で転倒の危険性が考えられると言う場合は、目立つ色で段差に気づいて頂くような方法もあります。

このようなスロープが有効だと思われる方は、シールバーカーや歩行器、車いすを使用している方になるかと思います。
ただし、その場合であっても、設置するスロープの奥行には注意が必要です。
スロープの勾配が急であることには変わりありませんので、歩行器を使用される場合は、重心位置に注意し、車いすの場合は、重心位置やフットプレートの高さなどへの配慮が必要になります。

今回は、敷居に設置するスロープについてお話いたしましたが、皆様、どのように感じられたでしょうか。
わずか、数センチメートルの段差解消ではありますが、注意しなければならないことがたくさんあることをおわかりいただけましたでしょうか。
いつもお話させていただいておりますが、このような内容のご相談をされる場合には、必ず専門の方にご相談下さい。

では、今回も最後まで受講頂きありがとうございました。
少しでも、皆様のお役にたてましたら幸いです。

このセミナーに関するご意見・ご感想等はこちらより。お待ちしております。

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