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【第19回】住宅改修における制度の利用について
福祉住環境コーディネーター2級 見目真一

前回のWEBセミナーでは、暮らしやすい家づくりについて、大まかな考え方を述べさせていただきました。
今回は、暮らしやすい家づくりを行う際、利用できる制度についてご説明させて頂きます。
まずは、こちらをご覧ください。

栃木県の高齢者及び障がい者の住宅改修工事における制度各種一覧
制度名称 市町 対象者 内容 費用 自己
負担額
備考
介護保険制度 全国 要介護認定を受けている被保険者 定められた5種目の工事 上限
20万円
1割
日常生活用具の給付※ 全国 障がいの程度等諸条件あり(主に障がい者・障がい児) 障がい者・障がい児の移動等を円滑にする小規模な改修 上限
20万円
対象者により異なる 介護保険優先
高齢者にやさしい住環境整備事業 宇都宮市 所得等諸条件あり
(主に高齢者)
要介護者の住環境整備を促進するための工事 上限
120万円
4分の3 介護保険優先
重度身体障がい者住宅改造費助成 宇都宮市 障がいの程度等諸条件あり(主に障がい者・障がい児) 障がい者・障がい児の日常生活を容易にする改造 上限
120万円
4分の3
※日常生活用具の給付における住宅改修費の支給に関しましては、詳細が各市町により異なります。

ひびきが籍を置く栃木県において、現在、高齢者や障がい者が利用できる制度を一覧にしてみました。
(これらの制度は、他の制度に関係せず単独で補助が受けられるものであり、融資等に関しましては記載しておりません。内容に関しましても、私が実務の中で知り得ている範囲のものであり、簡略化した表現とさせて頂いております。制度の詳細等に関しましては、必ず各市町にご確認ください。)

最も、多くの方に利用される制度は『介護保険制度』になります。
全国、どこにお住まいであったとしても、要介護認定を受けておられる被保険者の方々は、この介護保険制度を利用し住宅改修工事を行う事ができます。
ただし、詳細に関しましては、各市町によって異なることが多く見られるようになってきました。介護保険制度の利用を検討される場合は、必ず、担当のケアマネージャーにご相談されることをお勧め致します。
障がい者においては『日常生活用具の給付』を受けることができる場合がありますが、これに関しましても、運用は異なるものの、内容は介護保険制度に近いものになりますので、介護保険制度の内容を参考にして下さい。

介護保険制度において対象となる工事は・・・

  1. 手すりの取付け
  2. 段差の解消
  3. 滑りの防止及び移動の円滑化等のための床材の変更
  4. 引き戸等への扉の取替え
  5. 洋式便器等への便器の取替え
  6. 1 〜 5 の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修
以上になります。

これに該当する工事におきましては、要介護認定を受けている被保険者の方であれば、介護保険制度を利用し、工事費用の9割分の補助を受けられることになります。
高齢者や一部の障がい者にとって、ある程度の費用で効果を発揮し得る施工内容が対象となっています。
これらの工事を行う事で、ご自身の生活すべてが、安全で楽になることは無いかもしれませんが、十分に効果を得られる内容だと思います。家づくりの検討の中で、このような内容の工事が出てきた場合には、是非、制度の利用をご検討下さい。

では、実際に介護保険を利用する場合は、どのように工事を進めて行けば良いのでしょうか。
まず、最も注意しなければいけないことは、”制度の利用を中心に考えない”こと。
制度の利用をお話しながら、「なぜ?」と、思われるかもしれませんが、制度は、”家づくりの中の一部”でしかありません。前回のセミナーで、”暮らしやすい家づくり”についてお話いたしましたが、制度を利用する場合であっても、このような考え方で進めて行くことをお勧め致します。
介護保険制度で行う事ができる工事は、前述した5種目に限られます。費用に関しましても、上限額が20万円。個々の例を考えて行きますと、この他にも様々な制限が設けられている制度が介護保険制度です。
保険料で賄われる制度である以上、こういった制限を設けることは当然のことで、公平性を保ちながら、被保険者の状況を踏まえ、その時々に応じたより良い制度にして行くものが介護保険制度になるのだと思います。
この5種目の工事以外にも、安価で容易、かつ効果的な方法があるかもしれません。
または、費用は高価になるものの、それに見合う大きな効果を得られる方法もあるかもしれません。前回通り、家づくりは、工事に限られるものでもありません。
制度に利用されるのではなく、制度を上手に利用しましょう。

制度を中心に考えてしまいますと・・・

  • 『案』が限られてしまう?
  • 不必要な『案』まで出てしまう?
  • 限度額が気になる?
このようなことが起きてしまう場合があります。

具体的な例をあげてご説明しましょう。

Aさんは、居間から隣にあるトイレに行く時は、何かに掴まらなくても一人で歩いていくことができます。しかし、10m程度歩くと、だんだん足に力が入らなくなり、膝が折れてしゃがんでしまうことがあります。このような状況であるため、入浴はデイサービスで行っています。
Aさんのお宅のトイレは、居間から廊下を隔てた隣にあり、寝室からは壁を隔てた隣にあります。居間からはとても近くにトイレがあるのですが、寝室からトイレに移動する夜間はとても大変です。
まずは、トイレと逆方向の和室を2部屋通り、廊下を通って、家の中をぐるりと1周回らなければなりません。その間には、10pの段差もあり、この段差を上り下りして行かなければなりません。寝室では、オイルヒーターを使用し一定の温度に保っているのですが、それ以外の部屋はとても寒く、照明を付けることも大変になります。
ケアマネージャーさんにポータブルトイレの使用を勧められたのですが、寝室では無く、トイレで排泄を行いたいと考えています。

さて、このAさんのお宅を暮らしやすくする場合、どのような”家づくり”を行って行けば良いのでしょうか。

皆様もお気づきの通り、まずは、寝室とトイレを遮っている壁を解体し、新たな通路を設け、引き戸を新設することが有効だと思います。しかし、この工事、一般的には介護保険制度の対象にはなりません。(状況により対象外にならない場合もあるかもしれませんので、同様の内容があった場合は、各市町にご確認ください。)
制度を中心に考えてしまいますと、このようなわかり易い改善案であっても検討できないことになってしまいます。

そこで、Aさん。新たな通路を設けることは保険対象外であるため、他の保険対象の方法を考えたところ、手すりの取り付けの検討が行われました。

『手すりの取り付け』・・・
介護保険制度の中で、とても多く行われている工事になりますが、果たして、Aさんの場合、有効なのでしょうか。
Aさんの動作を考えてみますと、”常に掴まるものが必要”と考えてもおかしくないかと思います。和室の畳の上で、襖が3か所あり方向も変わる。この場合、手すりを取り付けることは可能でしょうが、とても多くの費用が必要になり、手すり自体も、決して使いやすい状況にはならないかと思います。
介護保険制度対象の住宅改修工事に拘らければ、この方法の他に良い方法があるはずです。

さらに、介護保険制度に拘ってしまいますと、暖房器具や照明器具、電源などの設備・電気工事は、すべて対象外になります。温度管理や視認性に対する配慮はとても重要なことですが、このことに関してはまったく触れることなく検討が進んでしまう事になります。

手すりを取り付ける方向で検討が進んだAさんですが、約18万円の工事内容になりました。ここで、Aさんは限度額の20万円に拘り、この機会に限度額まで使いたいと考えました。
現在は、デイサービスでしかお風呂に入りませんが、夏になったら、足の筋力も上がるかもしれないので、ご自宅のお風呂でシャワー浴ぐらいできるかもしれない、と考え、見積額が20万円になるよう、お風呂に手すりを取り付けてもらうことにしました。
ケアマネージャーさんにも、シャワーチェアと手すりがあれば、入浴ができることを伝え、確認、承諾を得ました。

限度額に拘ると、”ご自身の予算が20万円”といったような誤解を生んでしまう事になりかねません。そもそもの問題は何だったのでしょうか。夜間の排泄が安全で容易になるはずだったのに・・・

以上、例をあげてご説明しましたが、ご理解いただけましたでしょうか。

公的な補助である介護保険制度。
適切に利用すれば、大きな費用負担を受けながら、ご自身の生活動作を補完することができ、とても有効な資源となります。
しかし、誤った解釈をしてしまいますと、工事の恩恵を受けにくく、ご自身の生活ばかりか社会負担を増やしてしまうことにもつながりかねません。
今回の例は、実際のケースに基づくものではありません。当然、このような検討内容では暮らしやすい家に改善することはできません。
このような例を参考にして頂き、制度を上手に利用されて下さい。

例えば、宇都宮市では、所得に制限はあるものの、『介護保険制度』と『高齢者にやさしい住環境整備事業』を併用できる場合があります。
家づくりが、どうしても大規模な内容になってしまう場合、最大140万円の工事を最大32万円の負担で行う事ができることになります。全国的にもあまり例の無いことではあるかと思いますが、支援に関わっておられる方は、覚えておかれると良い情報であるかと思います。

今回は、以上になります。
最後まで受講頂きありがとうございました。
また、次回のWEBセミナーをお楽しみに!!

このセミナーに関するご意見・ご感想等はこちらより。お待ちしております。

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