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【サイドストーリー】家族のつぶやき「後編」
宮部紀子

家族のつぶやき「後編」
〜スウェーデンの高齢者介護から〜

福祉の理想の国、スウェーデンをこの目で確かめられると、興味津津で出発しました。
と言いましても、ストックホルムにある5箇所の施設訪問で、それぞれ2時間足らずの説明ですから、スウェーデンの福祉を垣間見たという程度です。そこから印象に残ったことを記したいと思っています。

《スウェーデンの高齢者ケアの3原則》

  1. 継続性の尊重
  2. 自己決定権の尊重
  3. 残存能力の活用

《訪問した施設》

ヨハネスホフ地区老人福祉課 介護査定担当(ストックホルム市には14地区)
ここからサービスが形になってゆきます。社会学を学んだ専門性の高い査定員によって提供されるサービスの量が決められます。

  • この地区の人口は4万人 査定員11人で1人120人を担当 最近、対象者が高齢化しているとのことでした。
  • 説明者のチーフが最初に話したのは、病院で治療が終わった人を5日以内に退院させなければならず、在宅かケア付施設か判断が大変難しいということでした。
  • サービスの査定内容は
    ホームヘルプの利用時間、デイケアの利用日数、
    ホームヘルプが月250時間を越えるときは施設ケア
〔近くにとても素敵な教会がありました。また、帰り足で寄った病院には祈りの部屋が用意されていて、静かな時間を過ごすことができると思いました。〕

在宅介護サービス提供会社アレリス(民間委託)
査定されたホームヘルプの時間をどのように使うかを利用者と相談し、掃除、洗濯、買い物支援、シャワー浴び、配食などのサービスを提供します。起床からベッドに入るまで、そして、夜間の睡眠確認まで、在宅生活に必要なサービスが提供されます。

  • 400戸と契約していますが、25パーセントは緊急ボタンのみの利用者です。
  • 職員は2人のチーフ、日中は30人、夜は10人、真夜中2人、計画者5人(利用内容を検討)
  • スタッフの教育は対人関係に力を入れていて、特に最初の出会いがとても大切で、利用者の拡大は何といっても口コミが一番だそうです。(民間企業です)
  • この会社はノルウェー、デンマークにも支部があり、スウェーデンだけでも3000人の職員を雇用しているという大企業です。
*エピソード
  • 最後まで自分のベッドで、が主流の国。(医療スタッフもかかわり寝たきりなったときの介護もある)。食事が取れなくなったとき、本人の意思により、水分補給と口腔内の清潔を保つことで終末を迎えた人もいる。
  • 盗った盗られたのトラブルは、警察に届け2分以内に発見。老人の頑固さ、もの忘れだからと曖昧にしない。
  • 孤独死は昨夏2人 朝訪問して発見したら医師に連絡する。医師が死亡診断書を作成し親族に連絡。警察沙汰になることはない。
18歳で親から独立し、自分の人生を築くなかで、自己選択と責任を身に着けた国民性が、介護はコミューンの世話でをルールとし、親族の世話にはならない文化を作っていると、強く感じました。

〔この会社が入っている建物は1926年に建造されたもので、市の文化遺産に登録されています。1990年に高齢者施設に市によって改造され、1階がアレリス、2階から認知症のグループホーム3フロア、医療的対応の必要な高齢者のアパート2フロアがあります。
こういった街中の6,7階建てのビルが住宅なのか、オフィスなのか、施設なのか一見して分からないのです。日本で見る施設らしい施設は見られませんでした。民間委託は業務委託で建物はコミューン(市)で用意しています。〕

認知症デイケア施設グリンドゥスチューガン(民間委託)
1980年代半ばから認知症のケアが始まったそうです。ここも1985年にスタートしています。

  • 25人の方が公共の交通機関であるタクシーで來所(送迎はタクシーです)
  • スタッフは5人+チーフ
  • 朝食と昼食が提供された後、5人ほどのグループに分かれて活動します。
    “みなで楽しくやろう!” がモットーで家事などはさせないそうです。
    活動は筋肉を柔らかくする運動、音楽、ゲーム、外出、図書館からの本を読む、古い時代のテレビを見るなど日によって様々。
    グループに参加できない人を見守る職員も配置。
    行事、親族との話し合いなどを実施されています。
  • 利用者は平均85歳で、近年、高齢になってきているそうです。
〔この建物は王室ゆかりの建造物。屋上をデイケアに、2,3,4階は認知症のグループホームに改修。部屋も居間程度の広さで、丸テーブルがいくつかあり、4,5人ずつ座っています。調度品がとても素敵です。あちこちに置かれている椅子がまた素敵で、さすがデザインの国だと感心しました。座ったり、なぜたりしてきました。〕

高齢者介護施設クルトープス・ヴォード
認知症のグループホームと介護度が高い人たちの介護ホームの両部門があり、別々の階でケアされています。重い疾病の人はいないのですが、何かしかの医療が必要な人が利用しています。

  • 6フロアー84人が入居
  • 入居は64歳以上で、査定が必要です。ただし、在宅でのケアが長くできるようになり、なかなか査定がおりないため、入居する年齢は高齢になっています。
  • 査定がおりれば、待つことはなく必ず入居はできるそうです。(施設を選ばなければ)
  • スタッフ 90人(ハーフタイムを入れて実人員)、内10%が看護師で24時間在駐。
    スタッフの中心は準看護師(高校(=専門学校)3年+1年で資格が取れる)です。
  • 夏休み中で、体験労働として高校生のボランティアが活動をしていました。
  • 施設内に、スタッフのための訓練の場所があり、労働時間内に腰痛予防のためなどの筋肉トレーニングができるようになっています。
*エピソード
  • 見せていただいた居室の利用者は家族とサマーハウスで過ごしているとのことでした。カーテンはカラフルで、長年使い込まれた家具が上手に配置されていました。
    多分、部屋ごとに個性があるのだろうなと想像されました。
  • 個性的といえば、プレスリーハウス(?)がありました。エルビス・プレスリーの大ファンだという部屋の住人がプレスリーのポスター、レコード、CDなどで部屋中を飾っているのです。60歳代のひげのなかなかダンディな男性でした。
〔この施設も、元オフィスビルと電子関係の組立工場だった建物を内部改装したものです。すべての住宅は住宅建築法の規定の中で最低限の条件として、1部屋+キッチン+バスルーム(トイレとシャワー付)を備えていることとされています。
それは介護施設の個室でも守られています。(キッチンは簡易キッチンですが)。
介護ベッドは施設のものですが、カーテン、調度品は個人のものです。〕

ベルグスンドス医療介護住宅(民間委託)
若いころからの疾病で、医療的な処置が必要な人たちが住むアパートです。
15戸から16戸ある集合住宅が8棟あり、家賃が要ります。年金で払えない人には自治体から補助が出ます。

  • 現在の利用者 123人
  • スタッフ 利用者15人に対し 日中4人、夕2人、夜1人、PT,OT
    看護師24時間在駐、医師は週2回外から來所
  • どんなに病気の人でも健康な部分があるはず、そこを生かして活動をします。
    テーマごとにコーチがいます。例えば音楽セラピーなど。
    また、グループやサークルを用意し、活動に参加してもらいます。
    例えば、
    • 庭グループはお花の手入れ、
    • お菓子を焼くグループは焼いたお菓子を施設内のカフェに提供
    • 手仕事サークルは今回のテーマは「花」 染色、造花つくりなど
    訪問した日は展示会の日でした
  • ここに入っている人は重症の方が多いようです(1年に90人余りの人が亡くなっています)。だから、生きがいの部分に力を入れていると感じました。
ここは最近民間委託になり、説明をしてくださった施設長(女性)はコミューンの職員から引き続きこの職にあるとのことです。スタッフは職場に残ることを希望すれば企業はそれを断ることはできないことになっています。

◎ここで民間委託のことについて
  • 近年、民間委託が増えてきていますが、経費の面からではなく、質の点からだと、前述の施設長は話しています。
  • 委託先は大企業から公的施設で働く職員が立ち上げる小さな施設まであります。それを可能にしているのは、職員の賃金に格差がないことです。
  • コミューンに対し、3か月毎と1年に1回の業務の報告義務があります。そして、3年毎に契約更新です。
  • 委託は業務委託で、建物はコミューンのものです。
◎そこでサービスの利用料金と施設の運営費について
  • 利用料はコミューンへ納めます。個人が施設に直接支払うことはありません。
  • 納める額は、年金から高齢者の手元に残す保持額(約6万円)と住居費(家賃)を差し引いた残額により決まっています。
  • 施設の運営はコミューンから利用者数に応じ支払われます。その他活動費なども加算されます。
  • 利用者が休んでも食費を除いた利用料が支払われます。(これは羨ましいと、施設を運営する同行者の弁)
理想とされているスウェーデンの福祉はどんどん変化しています。1970年代から建設が進められていたサービスハウスは2010年末で、75歳から入居できる安心住宅に改築されました。それは、80歳以上の超高齢者が増加し、在宅ケア、認知症高齢者ケアが優先されるようになり、また、自立できる高齢者は減って、認知症グループホームや末期高齢者が入居するナーシング部門を拡大することになったからです。
様々あった住宅の形も現在は以下の4形態になっています。
  • ケアするホーム
  • 認知症ホーム
  • 安心住宅……介護はサービスを利用して在宅ケアで
  • 一般住宅
元サービスハウスのカフェテリアで昼食をとりました。お元気な高齢者の方たちが見えていました。車椅子でご婦人が私たちのところへ寄っていらっしゃいました。
「私は100歳よ、100歳よ」と明るく陽気です。花柄のワンピースがとても素敵です。どなたも身支度を整えた服装で昼食を楽しまれています。
スウェーデンの高齢者の食事は昼食がメインで(飲物、パン、主菜、サラダ、コーヒーのセット)、朝食、夕食はオープンサンドのような軽いもののようです。デイケアでも朝食はスタッフが用意するけれど、昼食はレストランに委託されたものでした。
スウェーデンも高齢化が進み、介護者不足が予想されているようです。どのような解決策を見出してゆくのでしょうか。現在も、施設で働く人に多くの外国人がいました。

以上は、通訳を通してのメモと事前に渡された資料を参考にしたものです。内容の正確さについて適切かどうか不安はありますが。
各施設で、素敵なテーブルと座り心地の良い椅子に腰を下ろして、紅茶とクッキーをいただきながら、一生懸命説明してくださるお話を伺った数日間、夜の11時に美しい夕焼けを見た夏至の空、共に思い出深いものがあります。
素晴らしい体験をしたと思います。他の人の感想を少し。
「最後まで在宅生活ができるのが羨ましい」
「デイケアの活動なら、身近でもっと良い活動をしているところがあるわ」(日本もまんざらではありません)
「年金内で必要なサービスを受け、生活の心配がないこの安心感が羨ましい!」
私の感想です。

ここで私事になりますが、母は予定通り7月30日に家へ帰ってきました。
丁度その日、団地で納涼祭があって、車椅子に乗せて出かけてゆきました。
ご近所の方々が口々に声をかけてくださると、母はにこやかに挨拶を返していました。
よかった! と思いました。
現在利用しているサービスの質や量にはスウェーデンと比較して何の問題もありません。
決定権と責任が当事者の母でなく私にあることが大きな違いでしょうか。日本の親孝行を絵に描いたような家族介護だなぁと。まあ、日本人だからと納得して。
実はスウェーデンにも家族介護はあるようです。その家族を支援する間接的サービスとか、直接的なサービスでは、報酬としての現金支給、ヘルパーとして雇用されての報酬などで支援しているようです。(これは資料からです)
ちなみに、私の住む大田原市でも、介護度4以上の親族を在宅介護する者に月5000円の介護手当てが支給されています。

お読みいただいて、ありがとうございました。

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